「がんの遺伝子は変わる?」治療の前後で見える“本当の顔”とは
2025/07/24
プレシジョンメディシン
近年、がん治療は「個別化医療(プレシジョンメディシン)」へと大きく進化しています。その中心にあるのが「がん遺伝子パネル検査」です。患者さんの腫瘍から得られた遺伝子情報を解析し、それに応じた治療法を選択することで、より効果的な治療を目指します。
しかし、この検査をいつ受けるかによって、得られる情報や治療の選択肢に大きな差が出ることをご存じでしょうか?
がんは、もともと体内の細胞に遺伝子変異が起こることで発症しますが、抗がん剤治療や放射線治療などの影響によって、新たな変異が出現することもあります。
これは、治療によって、一部のがん細胞が生き残り、治療に対して抵抗性を持つ“別のタイプ”のがん細胞が優勢になる現象です。
つまり、治療前と治療後では、同じ腫瘍でも“遺伝子の顔ぶれ”が変わっていることがあるのです。
保険適用で受けられるがん遺伝子パネル検査は、基本的には「標準治療が終了または終了見込みの段階」で実施されることが多いですが、自費で受ける場合は、以下のタイミングで実施することで新たな治療の可能性を探ることができます
・標準治療を始める前、または初期のうちに検討
初回の遺伝子情報は、治療前の“がんの素顔”を捉えられる貴重なデータです。とくに再発・転移が予測される場合や、希少がんなどで治療選択肢が限られるケースでは、早い段階での検査も視野に入ります。
・標準治療終了後に改めて
抗がん剤などの治療によってがん細胞が変化した可能性がある場合、再度の遺伝子解析を行うことで、新たな治療法が見つかることもあります。
がん遺伝子パネル検査は、“1回きり”の検査ではなく、「がんの性質が変化する可能性」をふまえて柔軟に活用することが大切です。
治療方針に迷ったとき、選択肢が尽きそうなとき、その時点のがんの状態に則した“再解析”という選択肢もあることを、ぜひ覚えておいてください。